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 第48回ヴェネツィア・ビエンナーレ
         非芸術的取材日記……村田 真

ビエンナーレ国際賞を受賞した 蔡國強の彫刻作品
ビエンナーレ国際賞を受賞した蔡國強の彫刻作品
6月9日(水)

 

 昨夜、成田発最終便のエールフランスで早朝パリに到着。この便は夜間飛行なので無駄がなく便利だ。乗り継いだヴェネツィア行きの便は窓側の席だったので、マッターホルンをはじめアルプスの山々が手に取るように見える。シャルル・ド・ゴールからマルコ・ポーロへ。欧州にはエライ人の名を取った空港がたくさんあるけど、日本にはない。って話は2年前にも書いたな。空港からヴァポレット(水上バス)でホテルのあるリド島へ。今回は、ホテルもビエンナーレのインヴィテーションもSCAI(白石コンテンポラリーアート)のお世話になった。ありがとうございます。こんなとこでお礼をいってどーする。

Wim Delvoye 話題をさらった中国の作家たち
Wim Delvoye
話題をさらった中国の作家たち
Wang Du
Wang Du
Wang Xing Wei
Wang Xing Wei
 シャワーを浴びて、ヴァポレットで15分ほどのジャルディーニへ。リド島に泊まるのは初めてだけど、ビエンナーレを見に行くには意外と便利だ。会場に着いたのはすでに昼すぎ。今日から3日間ヴェルニサージュなので、けっこう混んでいる。とりあえず日本館に向かうと、おーいるいる。出品作家の宮島達男をはじめ、柿の木プロジェクトの関係者、国際交流基金の人たちも。さっそくパビリオンに入ろうとしたら、柿の木の応援に駆けつけた日比野克彦氏や、自称現代美術のチアガール(という年でもない)山口裕美嬢に誘われて昼飯を食うことに。いったん会場を出てレストランへ。そこでワインのデカンタを2本空けてしまい、空腹、寝不足も手伝って、すっかり酔っぱらってしまった。まだなにも見てないのに、早くも出鼻をくじかれたっつーか、自分でくじいたんだよ。

 ほろ酔い加減で、ジャルディーニのパビリオンを見ていく。イタリア館でハラルド・ゼーマンを見かける。よれよれの白いシャツを着たヒゲ面のおっさんだが、取り巻き連中やカメラマンを従えてなにやら指図しながら歩いてた。ひととおり見終えてから、今度はアルセナーレへ。途中、建畠氏と会ったので、メディア・デザイン研究所の佐野さんからのメッセージを伝える。アルセナーレでは、ゼーマン企画の「dAPERTutto」が開かれている。「アペルトからすべて」という意味で、80年にゼーマンらが創設した若手部門の「アペルト」が95年に廃止されたことへの当てつけにも聞こえる。でも展示はジャルディーニよりずっとおもしろい。驚いたのは、100人の出品作家中、中国人が最多の20人を占めていたこと。ちなみに日本人は0。その中国の旗手ともいうべき存在が、一番奥の建物に作品を展示していた蔡國強だ。
 蔡さんは『美術手帖』編集者の宮村さんのインタビューを受けている。写真家の安斎さんや美術ジャーナリストの新川貴詩夫妻もいる。まだ空は明るいけど、もう夜の8時過ぎ。みんなでメシ食おうってことになって、蔡一家、新川夫妻らと蔡さんおすすめのリド島の庶民的なレストランへ。スズキ、舌平目、エビのグリルにイカスミのスパゲティ。もちろん白の安ワインも。

 

 
アメリカ館のアン・ハミルトン
アメリカ館の
アン・ハミルトン
ブラジル館
ブラジル館
Louis Bourgeoi's
Louis Bourgeoi's
宮島達男
宮島達男

 

 

 

 

 

6月10日(木)

 ホテルで朝飯食ってると、水戸芸術館の逢坂恵理子さんや美術評論家の市原研太郎氏も降りてくる。なんだ、みんな同じホテルだったんだ。今日はしっかり取材しようとジャルディーニへ。印象に残ったのは、オランダ館、アメリカ館、ブラジル館、ポーランド館、日本館(柿の木を除く)あたりでしょうか。なんか、これ!っていう目玉作品がないし、全体的に焦点がボケてる感じだ。でもこれはあくまで「非芸術的取材日記」なので、作品については触れない。知りたい人は『アエラ』7/12号と毎日新聞(掲載日未定)に書いたから読んでね。
 再びアルセナーレへ。前回同様、映像が多いのがシャクにさわる。ヴェネチア映画祭じゃねーんだ! って、これも2年前に書いたか。中国人作家の作品はみんな具体的なイメージと批判精神に富んでおもしろい。でも、このうち何人が21世紀の美術史に残るだろう。そのへんのとこも含めてさんにインタビュー。またジャルディーニに戻って、見落としたところがないかチェーック。気がつけばまた隣に新川夫妻が。ライターの住吉智恵さんも誘って、日本館コミッショナーの塩田純一氏と宮島氏の話を聞く。即席の共同記者会見だ。
 そんなこんなで夜になってしまい(といってもまだ明るいけど)、新川夫妻、住吉嬢とサンマルコ広場に近い運河沿いのレストランへ。ここは前回来た時にナンジョウ&アソシエイツの児島やよい嬢に紹介され、安くてうまかったんでまた来ようと思ってたのだ。ここでもイカスミのスパゲティに、シーフードやレバー料理。サンマルコ広場で食後のグラッパをあおっていたら、その南條さんと児島さんがやって来たんで合流し、3杯4杯と飲んでしまう。ホテルにたどり着いたのは12時過ぎ。

 

6月11日(金)

今日はヴェルニサージュの最終日。公開は午後2時までなので、もう一度ジャルディーニへ行く。日本からのツアーが到着したらしく、読売新聞の菅原さんや北九州の山根さんなど、ジャーナリストやキュレーターがウロチョロしてる。コレクターの青井さん、アートダイナミクスの磯村氏、それにSCAIの久保田さん、藤井さんとランチ。でもワインは飲まなかったもんね。午後はサンマルコに出て、台湾の展示とオルデンバーグ展を見る。今夜8時からベネッセ主催の宮島達男を囲むパーティーがあるので、いったんホテルに戻ってシャワーを浴び、ベッドに横になったとたん眠ってしまった。
 目が覚めたら7時半。あわてて着替えて、サンマルコ近くのホテル・バウアーへ。途中ヴァポレットで、ワタリウムの和多利さん一家と乗り合わす。会場はすごい人。韓国のキム・スージャ、キューバのカチョーも来ている。カチョーさんはおすもうさん並みに太っているので、シャチョーさんと呼ぶ。くたびれたので、同じホテルの青井さん、藤井さんと退席。帰途ヴァポレットで、また和多利さん一家と一緒に。ワタリに舟ってやつか。

 

6月12日(土)

 今日は3時から一般公開で、賞の発表もあるけど、ぼくは3時過ぎの飛行機に乗らなければいけないので、昼すぎまで時間が空く。迷わずアカデミア美術館へ。ここにはジョルジョーネの「テンペスタ(嵐)」をはじめ、ティツィアーノ、ヴェロネーゼらヴェネチア派の逸品がそろってる。うれしいことに、「レオナルドからカナレットまで」という素描展も開かれていた。こんなところでレオナルドの素描に出会えるとは! リド島に戻ってまだ時間があるので、アドリア海に面した海岸に出ると、おーみんな海水浴しとるわトップレスで日光浴しとるわ、この海の数百キロ先でコソボの人たちが虐殺され、NATOがユーゴを爆撃してるなんて、まるで別世界の出来事みたい。

※マークのある画像は、クリックすると大きなサイズで見られます。


第48回ヴェネツィア・ビエンナーレ
会期:1999年6月13日〜11月7日
開館:毎週月曜日休館
問い合わせ:ビエンナーレ事務局 pressoffice@lablennale.com

 

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