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World Art Report |
市原研太郎
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ロサンジェルス、LACMA&MOCA
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“Made in California”展
ブルース・コナー/スタン・ダグラス展
もう一人スタン・ダグラスは、現代アートの世界ではすでによく知られ、著名な国際展には必ず招待される90年代を代表するアーティストである。今回彼は、過去に制作したヴィデオ作品三点と、それに関連する写真とドローイングを出品した。なかでも95年の“Der Sandmann”は、彼の出世作となったものである。この作品はその後の彼を方向づける独特の演出が施されていて、三人のナレーターの語りに合わせて、縦割りの二つの画面に映された風景が微妙にずれてゆき、視界が360度回転してまた一致するといった凝った構成となっている。このずれが、観客にさまざまな感情と解釈を喚起するのである。それだけでなく写真によって、映像の背景となった現実の場所の紹介と、ヴィデオが撮影されたセットの模様もまた写真によって示される。このような虚構と現実の対比の仕掛けは、彼の作品に謎めいた陰影を与える。90年代のコンセプチュアル・アートの精華が、彼の作品に結晶しているといっても過言ではなかろう。
ポール・マッカーシー回顧展
同じ空間の隣の場所では、“Flight Patterns”と題されたグループ展が開かれていた。この展覧会は、マッカーシー展とは対照的に、地味で目立たないコンセプチュアル系の作品を集めていた。そこには、現代カリフォルニアの文化的背景となったポスト・コロニアル状況を踏まえた作品が呈示されていた。それらに共通する他では見られない奇妙な風景は、多様な文化の融合や混合の帰結ではなく、むしろその離散と反発が産み出す文化的な斑模様を映し出している。疎外と物象化が、カリフォルニアでは日常となっており、カリフォルニアの空気そのものを歪ませているということだろうか。つまり、物象化を打破し、疎外を克服することは、マッカーシーのように、それを過激化することで逆説的に出口を見出そうとするような個人的部分的な抵抗なら可能であっても、ことカリフォルニアという土地ではすこぶる困難だということだろうか。
[いちはらけんたろう 美術批評] |
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