サイモン・フェイスフル
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キュレーター兼アーティストで、「コンテナシップ」のキュレーションを担当。それ以外の仕事についても、様々なコンテクストで広く発表されている。彼のギャラリー・ベースの仕事はサイト固有のインスタレーションの形をとるが、ギャラリーの壁を超え、この「サイト」の意味を問うようなものと化していることも少なくない。その作品のなかで繰り返し表現されてきたのは、空間と観念との「コネクティヴィティ」への関心である。チズンヘイル・ギャラリーでの「ハートフォード・ユニオン」において、彼は建物の皮膚をパンクさせ、ギャラリーの向こう側の粗野で信頼性に欠ける世界を繋ぎ止める臍の緒となるようなコードを作り出した。

世界の不安定性と流動性への関心は、いくつかの作品で表明されている。極性は変動しうるし、人格も不変ではない。時間と記憶は移ろいやすく、いまや不確定性は原理と化した──こうしたことがすべてフェイスフルの作品のうちに表現されているのだ。彼は自分の名前のアナグラムから20の変名を見出し、そこから自己の断片を含む一連の作品を産み落とした。弱々しいもう1つのエゴたちが、自らの存在理由の到来を待ちながら、ギャラリーや画商の店の片隅にわだかまっているのだ。もう1つの作品シリーズ「エスケープ・ヴィークルズ(逃走用の乗り物)」は、リアリティという物理的な拘束からもたらされる漠然とした不快感をテーマとする。この乗り物は失敗するのではとの不安でいっぱいで、観客に自分を使ったらどうかと誘いかけはするものの、タイトル通りのことはできないことも自認しているのである。