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The Best of 1997/1998 1997年のアートシーン/1998年のアートシーン |
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笹木繁男 現代美術資料センター主宰 | |
1997年のアートシーン 1――評価した展覧会/イベント/作品など 《坂本善三展》6/10~12/7 練馬区立美術館 没後10年にして、初めての本格的な回顧展。 熊本に居を定め、故郷の自然造形や身辺に馴染み同化した物の存在に目を配り、わが国の伝統を見据え、自己の表現にこだわりつづけた稀有の画家で、現在から将来を考える上で欠くことのできない必見の展覧会であった。 2――活動が印象に残った人物 ●《ジュゼッペ・ペノーネ――石の血管――展》8/5~11/3 豊田市美術館 自然を素材とし、素材との直接的な交換により、そのものの中に潜む生命との接触を意図した作品で感動的でもある。 ●《菅木志雄展》 広島市現代美術館 ペノーネよりも3年ほど前1944年生まれで、日本のモノ派の思想を発展継承する唯一の作家。初めての公立美術館での個展である。「成り立ち」と「関係性」を追求し作品化することを一貫して推進している作家。必見。 3――記憶に残った動向/トピックスなど 経済下の不況が美術界にも浸透し、展望のない1年であった。 峯村氏と池田氏との《1953年展》に関わる論争は、個人の歴史観をあらわにして興味があった。また、長年時評的発言を『構造』に発表してきた門田氏の言説に注目の集まった年でもあった。 |
![]() 坂本善三「作品82」1982年 写真:練馬区立美術館 ![]() ジュゼッペ・ペノーネ展展示風景 於:豊田市美術館 |
1998年のアートシーン 1――期待する展覧会/プロジェクト/作品など 自然との共生をテーマとするアート企画 地球温暖化・人体汚染・人種・性差問題など深刻な社会・環境問題を美術表現で考える。 2――活躍が期待される人物 特に名を挙げないが、国内における日本画・洋画の枠組みを超え、足下を見つめ個性的な作品発表をつづけている一群の若者に期待する。 3――1998年はどのような変化があると思いますか 現状のアートシーンがつづけば、早晩目標を失うこととなろう 自分を見据え、方法論を把握し、コンセプトを構築できた者のみに将来が展望できると考える。 |