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The Best of 1997/1998
1997年のアートシーン/1998年のアートシーン

矢口國夫 東京都現代美術館 学芸部長
1997年のアートシーン

1――評価した展覧会/イベント/作品など
《ジュゼッペ・ペノーネ――石の血管――展》8/5〜11/3 豊田市美術館
《ルイーズ・ブルジョワ――HOMESICKNESS――展》11/2〜'98 1/11 横浜美術館
《特別展 重力――戦後美術の座標軸》10/30〜12/9 国立国際美術館 など

このような設問にお答えするのは気が引けます。なぜならいずれも各美術館の担当者が必死になって作り上げた展覧会であり、その良し悪しを外部の者が云々することは気分の良いものではありません。その意味で『芸術新潮』が年末回顧的な特集を取り止めたのは英断だと思います。展覧会の評価はそれぞれの立場や人間関係など眼に見えない力が働くものであり、平常心で回答が行われているとはとうてい思えない例が多すぎます。私は自分の美術館の企画に対する反応の分析に必死で、他人の作った展覧会を語る余裕も能力もありません。ここに挙げたのは地道で、真面目に構成された展覧会と感じたものです。

2――活動が印象に残った人物
●建築家・安藤忠雄氏の活動

建築家としての活動ばかりでなく、東大教授に就任し、権威主義でない教育を試みようとしている様子が窺え、彼の生き方そのものに好感が持てる。

●細野晴臣の東京都現代美術館でのイベント「デイジー・ワールド・ミュージアム」の実現。

8月22日からの3日間、東京都現代美術館の大スペースでのサウンド・インスタレーションとコンサートを行なった。

3――記憶に残った動向/トピックスなど
セゾン美術館の閉館発表

民間の美術館活動として、我々関係者が常に注目してきた同美術館の閉館は極めて残念であり、またその美術界への影響は多大である。同美術館の存在自体が同百貨店のイメージ戦略上でも重要であったはずであり、経営上の問題でこのようなシンポルが失われることは、いかにもバブル崩壊の暗い世相を反映するものであり、それが公立の美術館運営の消極的雰囲気にもつながりつつある。“やっぱり日本は文化後進国”の印象を内外に強く印象付けた責任は極めて大きいと言わなければならない。
ペノーネ2
ジュゼッペ・ペノーネ展展示風景
写真:豊田市美術館

ルイーズ・ブルジョワ
ルイーズ・ブルジョワ「花咲けるヤヌス」
写真:横浜美術館

R.スミッソン
《特別展 重力――戦後美術の座標軸》
ロバート・スミッソン「コーナー・ピース」
(カユーガ岩塩坑プロジェクト)1969年
写真:国立国際美術館
1998年のアートシーン

1――期待する展覧会/プロジェクト/作品など
自分の美術館の企画が軌道に乗るかが不安で、他の方々の活動に期待する余裕などありません。

2――活躍が期待される人物
野田秀樹が東南アジアの人々と関連して行おうとしている企画は、新たな国際交流の可能性を示唆する活動として注目したい。

3――1998年はどのような変化があると思いますか
総じてペシミスティックな予想しかできない。上記のように経済活動の停滞が美術の世界にまで影響を及ぼすことは避けられまい。しかしバブルの中で乱立してきた低次元の文化活動が淘汰されるには良い試練かもしれない。美術館活動においても地道な調査や研究に基づく企画が重視されるようになるだろう。情報メディアなど派手な動向に惑わされていては個々の人間の魂を揺さぶるような活動は出来て行かないであろう。






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