2017年10月15日号
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トピックス

【パリ】ピースクラフツSAGA×REVELATIONS 2017
──ファインクラフト運動最前線──前編

下川一哉(デザインプロデューサー、エディター、意と匠研究所代表)2017年06月15日号

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 2017年5月4日から8日まで、仏パリの国立ギャラリー「グラン・パレ」で開かれた国際工芸フェア「REVELATIONS(レベラション)」には、約380組の出展者が16カ国から参加した。期間中の来場者は、約4万人。バイヤーやメディア関係者のほか、工芸マニアやコレクター、建築家やデザイナー、工芸事業者が来場者の主な顔ぶれである。


レベラション全景
1900年のパリ万博のために建造されたグラン・パレを会場に開催されたレベラション
写真:下川一哉


 数少ない日本からの出展者のうち、今回、注目されたのが「ピースクラフツSAGA」のブース。本事業は、特定非営利活動法人であるピースウィンズ・ジャパンが日本の伝統工芸支援の第1弾として立ち上げた事業。「工芸最先端宣言!」をキャッチフレーズに、佐賀県の伝統工芸事業者と仏人コーディネーターやデザイナーとが共同開発した工芸品をレベラションに出品した。

佐賀の伝統工芸に注目集まる

 今回、ピースクラフツSAGAのレベラション出展に参加したのは、肥前びーどろの副島硝子工業、名尾手漉和紙の肥前名尾和紙、佐賀錦の佐賀錦振興協議会、諸富家具の飛鳥工房とレグナテック、弓野人形の江口人形店、金工の花鏨(はなたがね)。出品する作品のデザインや展示ブースのデザインは、本事業のコーディネーターである滝野アンナ氏ほかデザイナーのサラ・ルセール氏、アーサー・ライトナー氏らが担当した。また、展示演出や作品の共同製作に、東京の皮革加工メーカーのホリイ、京都の藍染事業者の浅井ローケツが協力した。
 ピースクラフツSAGAがブース全体のテーマとしたのが「海」と「時」。昔話として国内外で知られる「浦島太郎」を下敷きにしながら、作品のモチーフや表現方法を決めた。特に、日本人のみならず、外国人にも広く理解され、共感を得るため、コーディネーターとデザイナーは、作品作りにアドバイスを丁寧に加えた。このテーマは、ブースのデザインにも採用された。ブースの天井にスリット状に配置された和紙は、真上から外光が入る会場の中でひときわ映え、豊かな陰影として「海」と「時」を表現し、来場者の目を強く引いた。


ピースクラフツSAGAブース
「海」と「時」をテーマにデザインされたピースクラフツSAGAのブース。天井から漏れ入る自然光を生かした演出が好評
写真:下川一哉


 肥前びーどろの副島硝子工業が出品したジュエリーボックス「玉手箱」の四季シリーズは、同社が独自に開発した重ね吹きガラスの技法を進化させた蓋と、黒檀製の本体を組み合わせたもので、「異素材の組み合わせに魅力を感じる。日本らしい『包む』文化を工芸とした進化させている」「作り手の押し付けを感じない作品で、好感できる。しかしよく見ると、確かな職人の技が感じられる」「何層ものレイヤーの中に物語と風景を感じる。日本には何度も行ったことがあるが、こんな表現は見たことがない」といった評価が来場者から聞かれた。メーカーからの出荷価格は、ひとつ2000ユーロほどと高額だが、多くの引き合いを得ることができた。


《肥前びーどろ》 副島硝子工業が出品した「玉手箱 夏の海 群青」。多層ガラス製の蓋と黒檀の本体を組み合わせた


 また、佐賀錦振興協議会と諸富家具の飛鳥工房が共同で開発したトレー「波紋」シリーズは、「繊細な織物と豊かな質感を抱かさせる木の対比が新鮮。実用的なインテリア小物と言うより、ホームデコレーションアイテムとして提案すべき工芸品だと思う」「サイズ感が良く、飾っておくだけでなく、いろいろなものを載せてみたくなる。例えば、透明なガラスの器を載せれば、きっと美しく映える」「建築家として、佐賀錦を使った家具をデザインしてみたいと思った」など、売り手や使い手のイマジネーションを掻き立てた。


左:《佐賀錦》
佐賀錦振興協議会が作成した佐賀錦と、諸富家具の飛鳥工房が製作した木部を組み合わせたトレー。多くの来場者が高く評価した
写真:Julie Rousse
右:《金工》
花鏨が出品した銀製合子「蛤合子 秋 錦花」。繊細な細工とストーリー性で注目を得た


 花鏨は、貝をモチーフにした合子(ごうす)「蛤合子」シリーズを出品。副島硝子工業の「玉手箱」同様、四季シリーズとして日本の自然を表現した。「デリケートで、細やかな技を見て取れる。これ自体がジュエリーのように大切なものだと感じる」「一瞬、自然物である貝殻に瑕が入っているのかと思ったが、これは人工的な創作で、物語があることに気づいた。海の底に眠る貝殻に、地上の風景が彫刻されているところに、とてもファンタジーを感じる」など、作品やその背景を深く読み込む来場者もいた。
 名尾手漉和紙の肥前名尾和紙が展示した和紙にも熱い視線が注がれた。藍で染めた和紙の素材を漉き込んだ「紙藍染」や手の痕跡を和紙の表面に残した「手の和紙」などは、作品としてはもとより、アーティストからは魅力的な素材としても評価された。


《名尾手漉和紙》
肥前名尾和紙が展示した和紙作品「紙藍染(かみあいぜん)」と「手の和紙」。作品としても、素材としても評価された
写真:下川一哉

工芸最先端宣言!

 日本の伝統工芸産業が、海外市場を開拓する動きは一層活発化している。これは日本に限らず、世界共通の動きでもある。そうしたなかで、工芸産業の新市場開拓を後押しするイベントを新たに興す動きも各国各地で見られる。そのひとつが、このレベラションなのである。
 日本の工芸事業者やデザイナーのなかで、レベラションはまだ広く知られるイベントではない。しかし、量産を前提とした工業製品の展示と商談を主目的とした仏パリのメゾン&オブジェや伊ミラノのミラノサローネ、独フランクフルトのアンビエンテなどにない特徴を持つこのイベントへの注目は、今後高まっていくに違いない。



 後編は、レベラションが主導するファインクラフト運動と協調する各国の工芸についてレポートする。

ピースクラフツSAGA×REVELATIONS 2017

日時:2017年5月4日(水)〜8日(月)
会場:グラン・パレ(パリ)
主催:アトリエ・ダール・ド・フランス(フランス工芸作家組合)

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下川一哉

デザインプロデューサー、エディター 1963年、佐賀県生まれ。1988年、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。同年、日経マグロウヒル(現 日...

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