アフォーダンス理論は、アメリカの心理学者J・J・ギブソンが提唱した認知心理学における概念で、「afford」(〜ができる、〜をあたえる)」と「-ance」の造語。アフォーダンスとは、動物(人間)に対して環境が提供するために備えているものであるとする。すなわち、物体、物質、場所、事象、他の動物、人工物などといった環境のなかにあるすべてのものが、動物(人間)の知覚や行為をうながす契機をつねに内包している(アフォーダンスをもつ)。たとえば椅子は「座る」ことをアフォードしているし、床はそこに立つことをアフォードしている。また知覚する動物の種が異なれば、アフォーダンスも異なる。アフォーダンス理論をシステムや道具、建築など、人工物のデザインに応用する試みはすでに行なわれており、元アップル社副社長で認知科学者のD・A・ノーマンは、著書『誰のためのデザイン?』(新曜社、1990)で、道具やコンピュータによるシステムの設計などは、それが何を「アフォード」しているのかを明確にデザインすべきであると提案している。どのような材質やシステムにするか、その違いはものへのアプローチの違いを変化させる。したがって行為を誘発させるようなデザイン、すなわち形ではなく「アフォーダンス」をデザインすべきだとノーマンは言うのである。また、火星探査機など、未知の環境で動作する人工知能などの開発にもこの理論が一部実現されている。
(紫牟田伸子)
関連URL
●ノーマン http://www.mediamente.rai.it/home/bibliote/biografi/n/norman.htm
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