J.デュビュッフェが、これまでの伝統的な美術史において評価の対象外であった、精神病患者や霊的幻視者などの社会から隔離された人びとの作品を積極的に評価するために用いたことば。「生の芸術」。これらの美術の専門教育を受けていない人々の作品を「もっとも純粋で、もっとも無垢な芸術であり、作り手の発想の力のみが生み出すもの」であると主張した。1945年頃からフランス、ドイツにおけるこれらの作品に注目したデュビュッフェは、48年にA.ブルトン、M.タピエらとともにアール・ブリュット会社を設立、その作品を収集公開し(ルネ・ドゥルアン画廊)、67年にはパリの装飾美術館にて展覧会を開催した。約200作家5000点にのぼるコレクションは、スイスのローザンヌ市に寄与され、76年「アール・ブリュット美術館」が設立された。また64−73年には機関誌『L'Art
brut』が刊行されている。自由で表現主義的な作風は、デュビュッフェ自身のものでもあり、またコブラの一員K.アペルや、50年代のシカゴ・イマジストらにも継承されている。現代においてはアール・ブリュットはこのデュビュッフェによって見出されたものとして歴史的に限定されており、精神病者、知的障害者の生み出す美術に対してはアウトサイダー・アート、あるいはエイブル・アート(可能性ある芸術)といった様々な眼差しや価値を担った呼称が用いられている。
(徳山由香)
関連URL
●デュビュッフェ http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/j-dubuffet.html
●ブルトン http://www.creative.net/~alang/lit/surreal/writers.sht#Breton
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