アート・マネジメントとは、広義には、芸術家などの創造性、それを享受するオーディエンスやコミュニティ、およびそれらを支える資本、という芸術文化活動をめぐる要素間それぞれの連携、接続を機能させるシステム全般を指す。この用語の歴史はまだ浅く、アメリカでのアートマネージメント教育は、60年代半ばのNEA創設に端を発する。公的な芸術基金が制度化されるに伴い、支援を受けた芸術機関に、社会に対するアカウンタビリティが求められた結果、アートマネージメントの必要性が唱えられ始めたのである。しかし、各国の政治、伝統により芸術文化機関の組織、運営制度が異なるように、アート・マネジメントもまた、各地の文化状況、政治によって多様に理解されているのが現状で、共通の見解を模索するよりも、各々の状況に応じた独自のマネジメントを作り上げることが肝要である。日本においても90年代に入ってから、メセナや文化政策といった言葉とともにさかんに文化関係者の間で口にされるようになり、企業、教育機関での講座開講数も増えているが、その多くが過剰供給された文化施設の運営、マーケティング、広報のノウハウを云々する、ミクロな経営術の伝授にとどまっているのが現状と言え、欧米のそれとは明らかに成熟の度合いを異にしている。
(宮川暁子)
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