ドイツ語のbio(生命)とtop(場所)とを組み合わせた造語で、多様な野生生物が持続的にその生態系を維持することのできる空間単位を意味する概念。広い意味では海洋や森林もビオトープの一種といえるが、主に人間の生活・活動と関連付けられるので、都市の中に残された「建物の屋上に作られた緑地」「自然回復のための工事が行われた河川」「立ち木が残された畑」などの空間で何かの生態系が維持されているとすれば、それをビオトープと考えるのが一般的。あくまでも生態系を重視するその観点は、同じ環境概念とはいえ、人間中心的な「ランドスケープ」とは根本的に異なっている。19世紀後半、ドイツの生物学者ヘッケルが「エコロジー」とあわせて考案した概念で、それゆえバイエルン州の州法でその保全が明文化されるなどドイツで最も早く浸透したが、近年では諸外国でも急速に関心が高まりつつある。地球環境の維持改善というその目的のためには、複数のビオトープを結んだ「ビオ・ネットワーク」の展開が必要不可欠とされるだろう。
(暮沢剛巳)
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