美術用語としての「キャンプ」は、「キッチュ」と表裏一体の関係にある。「ポップ・アート」が出現した1960年代初頭、その展開は従来のモダニズム芸術観が排斥していた「キッチュ」なものをも作品へと取り込み、批評家のなかにも、保守派の批判を承知のうえで、サブカルチャーのイメージに象徴される「キッチュ」を擁護する者が現われた。S・ソンタグは64年に発表したエッセイ「キャンプについて」で、こうした擁護に潜むアイロニカルな両義性を指摘し、以後「キャンプ」という概念がキッチュとの相関関係において問題とされるようになった。このような一面を強調すれば、「キャンプ」とはいかにもサブカルチャー/ポップの側に立ったもののように思われるが、ソンタグの言う「キャンプ」には「趣味判断の成り立たない領域」という含意もあり、そこにはまたフォーマリズムを典型とするモダニズム芸術観との密接な並行関係が存在することを忘れるべきではない。ソンタグ『反解釈』(高橋康成也ほか訳、ちくま学芸文庫、1996)を参照されたい。
(暮沢剛巳)
|