本来は「色層分析」を意味する言葉だが、写真表現の分野では、この言葉は初期の連続写真を意味することがある。初期の連続写真を撮影した写真家として名高いのは、アメリカのE・マイブリッジとフランスのE=J・マレーだが、とりわけマイブリッジが1872年以降に撮影しはじめたギャロップする馬の連続写真は有名だ。これは、当時開発されたズープラクシスコープという、スクリーンに動く画像の残像を作り出す機材の開発によって可能となったもので、このテクノロジーは19世紀末の映画の発明へと連なる一方、絵画などの旧来の表現媒体にも、知覚認識の在り方の重大な変更を迫った。E・マネの馬の絵画が、ギャロップする馬の連続写真によって、運動生理学上あり得ない誤りを犯していたことが発見されたのはつとに有名である。なお、その後長らく写真史の中に埋もれていたマイブリッジのクロマトグラフィは、1982年に、P・グラスのミニマル・オペラ《ザ・フォトグラファー》によって鮮やかに召喚されることとなった。
(暮沢剛巳)
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