基本的に、伝統工芸などの手作業による作品、主に家具、宝飾品、彫金などの実用品を指す。作品制作はデザインから制作までをひとりの作家によって担われる場合もあれば、分業による場合もある。いずれにせよ伝統的な技術の継承と、その技を身につけた職人というヴァナキュラーな要素によって支えられている。そのため産業的には機械生産に対する手工芸という意味で、またアートのコンテクストでは純粋表現たる芸術に対して応用芸術という意味で、近代以降傍系として扱われることが多かった。しかし、20世紀に入ってから、アーツ・アンド・クラフツ運動またはその理念を引き継いだクラフト・リヴァイヴァルはたびたび再燃し、そのつど既存の芸術概念を揺さぶったことも事実である。またクラフトの概念そのものも、文化状況のなかで次第に変化する傾向にある。例えば1971年イギリスに創設されたクラフツ・カウンシルが開催した展覧会「工芸とデザインの新精神」展(1987)は、ロンドンのサブカルチャーと、J・ブレイム、T・ディクソンら若手工芸家たちとのリンクを採り上げたもので、彼らは廃棄物や古道具などを再利用して作品の素材としながら、旧来の工芸品の枠を超える作品を制作している。
(宮川暁子)
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