批判的地域主義。アメリカを代表する建築批評家K・フランプトンが提唱した概念。そもそもこの概念は、A・ツォニスとL・ルフェーブルが提唱したものだが(1981)、フランプトンはそこに後衛主義の視点を加え、歴史主義にも前衛的な実験にも回収されない、地域固有の伝統と近代建築を融合しようとする立場としての「批判的地域主義」を確立した。その概要は主著『近代建築』(未邦訳、1984)の中で、「場所に根ざした建築であること」「風土性を最大限に生かした建築であること」など7箇条にまとめられており、「批判的地域主義」の骨子はフランプトンが提出したもうひとつの重要概念「テクトニクス」とも深く共振している。ところで、フランプトンがこの立場を初めて表明したのは、1983年の論文「批判的地域主義に向けて」においてであるが、この論文の初出媒体は『反美学』、すなわちH・フォスターを中心とするポストモダニズム論集であり、M・ハイデガーやP・リクールなどに依拠しつつ、歴史と伝統の重視を打ち出したフランプトンの立場はひときわ異彩を放っていた。
(暮沢剛巳)
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