クロッキーとは、完成作品に対する準備段階の仕事であり、画家の最も原初的なアイディアや記憶をとどめた素描(ドローイング)によるスケッチである。クロッキーは、グラフィックの即興であり、その軽妙で大胆なデッサンによって、描かれている対象からの生き生きとした印象を表現するとともに、その対象の印象を素早く一目で観者に伝える。このクロッキーという最も初期の段階でのデッサンは、その後のエスキースというペインティングの下描きへと移行していく前段階であると位置づけられる。そして、クロッキーは、エスキースのための予備的なデッサンというのみならず、作品を完成に導くために、画家の最初の印象やアイディアを留めておくという重要な役割を担っている。
(安藤智子)
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