美術史上重大なエポックを画した「キュビスム」の活動期間は、定説によれば1908年から18年までのわずか10年間に過ぎないが、ここでいう分析的キュビスムはその前半部分、年代としては12年までの期間に相当するP・ピカソとG・ブラックの活動を指す。この時期の二人の絵画は、全般に暗く抑制された色調で描かれており、また題材としてはスティルライフやポートレートといったごくありふれたものが選ばれている。換言するなら「分析的キュビスム」とは、幾何学的な図柄の多様さや非遠近法的知覚の導入といった実験と、極めて伝統的な主題との対比という「キュビスム」前半期の問題意識に対応するものだったのである。なおこの時期、二人は緊密な共同作業を展開しており、署名抜きではいずれかの作品と判別できないほど酷似しているが、この類縁性もまた「総合的キュビスム」とは異なる「分析的キュビスム」の特徴のひとつに数えられよう。
(暮沢剛巳)
関連URL
●P・ピカソ http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/p-picasso.html
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