いまや20世紀美術の代表的動向に数えられる「キュビスム」だが、この名称はそもそも1908年、H・マティスがG・ブラックの抽象画に投げつけた蔑称に由来している。この様式は、当時ブラックとP・ピカソが共働を営んでいたところから発したもので、無数の立方体の配置によって視覚を再統合するその試みには、アフリカのプリミティヴな彫刻、H・ルソーら「素朴派」の表現力、「自然を円柱、円錐、球として扱う」P・セザンヌの構造的連続性などの影響を指摘することができる。12年までの禁欲的な作風のものは「分析的キュビスム」、その後のアサンブラージュやコラージュを用いた作品は「総合的キュビスム」と言われるが、両者の決定的な差異は必ずしも明確ではない。この運動の生命は第一次大戦までと短く、また厳密にはJ・グリス以外の同伴者も生まなかったが、戦後のさまざまな芸術運動に重大なインパクトを与えたことは疑う余地がない。
(暮沢剛巳)
関連URL
●マティス http://www.artloft.com/matisse.htm
●ピカソ http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/p-picasso.html
●セザンヌ http://artchive.com/artchive/C/cezanne.html
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