20世紀に入って確立された、主に生物と機械における通信・制御・情報処理を総合して扱う学問の総称。「サイバネティクス」という言葉の由来はギリシア語のkysernetesにまで遡るが、現在流通しているような「サイバネティクス」の意味を定着させたのはアメリカの数学者N・ウィナーの『サイバネティックス――動物と機械における制御と通信』(池原止戈夫ほか訳、岩波書店、初版=1948/第2版=1962)である。
B・ラッセルに師事して哲学を学んだ一方、ハイゼンベルクの量子学にも強い影響を受けたウィナーは、人間とコミュニケートする機械とみなし、また情報を環境と交換する機械とみなす立場から、制御と通信を従来とは違った視点で扱う学問を提言、折からのコンピュータの普及もあって、その立場は世界的規模の認知を得た。ウィナーの「サイバネティクス」が直接の対象としていたのはコンピュータと身体の神経系の比較だが、その後「サイバネティクス」によって身体機能を拡張された「サイボーグ」、あるいは人工知能の可能性が取り沙汰されるようになり、また後にそこから派生するかたちで「サイバーパンク」や「サイバースペース」といった概念が提起されるなど、「サイバネティクス」の可能性はその後も拡張し続けている。
(暮沢剛巳)
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