環境やエコロジーの観点から考えられたデザインの総称。高度工業社会の発達がもたらした大量生産、大量消費が地球環境に深刻な汚染をもたらしたことは20世紀の人間社会における最大の課題だが、それがデザインの観点から問題視されるようになったのは1970年代以降と比較的最近である。もっとも、「環境デザイン」のルーツそのものは、おそらく新しい文明形成の観点からデザインを問題視したドイツ工作者連盟にまで遡ることができ、また50年代初頭にはスイスの建築家M・ビルによって「環境形成(Umweltgestaltung)」という概念が提唱され、それぞれ固有の方法論を持つ多くのデザイン原理を「環境」という観点から統合しようとする見解が表明されたこともある。近年、「地球に優しい」のキャッチフレーズの下、フロンガスのような環境への負荷が高い素材の使用を禁止する国際的なコンセンサスが成立したのは、こういった先行研究に基づく環境への高い意識が徐々に浸透していった成果と言えよう。「環境デザイン」とは、高い専門性を有しながらも、特有の領域に縛り付けられず、今日のデザイン全般に要請される課題を包摂した概念なのである。
(暮沢剛巳)
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