1950−60年代の絵画の「水平性」を指す概念。レオ・スタインバーグがその論文「他の批評基準
(Other Criteria)」(1972)で提起した。flatbedとはもともと平台印刷機(版面と紙面を合わせ水平に置き圧着−印刷する)のこと。スタインバーグの考えは次のようなものだ。まず、ルネサンス以来西洋の絵画はたえず、頭を上、足を下に直立した人間の体勢に合わせて世界を表象するものとして、描かれ、また構想されてきた。つまり垂直性が絵画のひとつの条件だった。これに対しラウシェンバーグの絵画は、たとえ壁に掛けて展示してあっても、あらゆるものがその上に載せられるような、水平に置かれた作業台を暗示する。同じような構造は、デュビュッフェやウォーホルの作品にも認められ、これら「平台型絵画平面(
flatbed picture plane)」は、水平の不透明な作業台=文化として現われる絵画として、垂直の透明なスクリーン=自然として現われる絵画にとってかわる。のちにロザリンド・クラウスによって展開される水平性/垂直性の議論は、このスタインバーグの考えの再評価/再発見を契機としている。
(林卓行)
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