1純化された線、面、量塊によって作品を構成する様式。戦前のバウハウスやデ・ステイル、構成主義、そしてピュリスムなどにその淵源を求めることもできるが、一大潮流として隆盛したと言えるのは第二次大戦後間もない1940年代後半からのことである。特にフランスではA・エルバン、M・スフォール、J・ドゥヴァーヌらを中心に幾何学的抽象を国際的な様式として確立しようとする動きがあり、雑誌『今日の芸術』誌を理論的な拠点としていた。一時期はより穏やかな色彩と曖昧な形態を用いて描いたJ・バゼーヌやA・マネシエといったいわゆる戦後の「エコール・ド・パリ」の画家たちとパリ画壇を分け合う格好だったが、50年代半ばには一種のアカデミズムへと硬直し、同時代に全世界的な規模で展開されていったアンフォルメルの流行の陰でその影響力は弱まっていった。ただ、フランスの美術史研究では長い間冷遇されていた幾何学的抽象も近年は再評価の気運があり、97年にパリ市立近代美術館で開催された「ヨーロッパの30年代」展でも戦前の幾何学的抽象に展示セクションが与えられた。
(飛嶋隆信)
関連URL
●パリ市立近代美術館 http://www.paris.org/Musees/Art.Moderne.Ville/info.html
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