季刊誌『批評空間』の別冊として刊行されたモダニズム芸術論の特集号。構成としては、浅田彰、岡崎乾二郎、松浦寿夫の編集委員三氏に磯崎新らを交えたディスカッションをはじめ、C・グリンバーグ、M・フリード、T・J・クラーク、R・クラウスらの英米系のモダン/ポストモダンを代表する論客のテクストが数多く掲載されている。同特集に翻訳掲載されたテクストの大半は、モダニズム芸術論の「教科書」とも呼ぶべき必読文献だが、美術専門誌ではない『批評空間』の特集号がその翻訳の初出であった事実は、日本の美術ジャーナリズムにおいて本格的なモダニズム論が長らく不在であったことを逆説的に明らかにした。その意味では、序文にある「日本の芸術実践の環境において、最も深く欠如しているものは、おそらく、その批評の次元に他ならない」との記述が意味するものは軽くない。編集方針にいささか読者を限定するきらいがあるとはいえ、ポストモダニズムの喧噪が過ぎ去った後、あらためてモダニズムを再考するための格好の手引きとなっている。
(暮沢剛巳)
(太田出版、1995)
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