ギリシャ語で「図像」の意味をもつ。美術史用語としては、とりわけ東方正教会の影響下で発達した板絵やフレスコ画、写本、モザイク画に表現された聖人や聖母、キリスト像などを指して使われる。この宗教画、礼拝画としてのイコンは、基本的に中世美術用語として使用されることが多い。第二次大戦後の現代美術にあっては、とくにポップ・アートとの関連で使用されることが多い。ウォーホル作品がその代表的な例である。ウォーホルのマリリン・モンローは、現実の対象とは切り離されて偶像的イメージだけが反復・強調される。つまり偶像そのものが現実性を持つに至るのだが、ウォーホルは反復によってイコンの偶像的性格を暴き、無化しようとしたともいうこともできる。
美学・哲学の分野では、C・S・パース(1839−1914)とゴットフリート・ベーム(1942-)を取り上げておこう。パースの分類によれば、イコンは「類似記号」である。(見本と実物のように)記号と対象が似ており、その類似記号(イコン)によって対象も想起される。ゴットフリート・ベームは、マーシャル・マクルーハンが描き出したグーテンベルクの銀河系――すなわち、文字文化の時代――から抜け出して、我々が新しく「イコンの時代」――すなわち、視覚的認識の時代――に入ろうとしていると記している。
(浅沼敬子)
関連URL
●A・ウォーホル http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/a-warhol.html
●M・デュシャン http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/m-duchamp.html
|