図像解釈学。古くはC・リーパの「イコノロギア」のような寓意のタブローで知られるが、現在ではそのような図像の分類、記述を行なうレヴェルをイコノグラフィー(図像学)と呼んでイコノロジーとは区別する。こうした用法はA・ヴァールブルクの思想を受けたE・パノフスキーによるものである。彼によると、作品解釈においてその「主題・意味」を三つの層に分ける必要があり、それぞれ「自然的主題」「慣習的主題」「本質的意味・内容」となる。そしてイコノグラフィーは「慣習的主題」の層に関わり、イコノロジーが「本質的意味・内容」を扱うとされる。H・ヴェルフリンやA・リーグルの様式論に対しては、文化的思想的コンテクストの読解の重要性を強調している。E・パノフスキーを始めとするヴァールブルク学派によって広まり、美術史研究のひとつのスタンダードとなった。しかし、必ずしもパノフスキー自身の研究が、こうして特徴付けられる「イコノロジー」と一致しているわけではないことが指摘されている。また、「視覚芸術における意味」を強調するそのアプローチが、ややもすると絵画表象に固有の秩序を尊重せず、寓意的なレヴェルの解釈を強調しすぎているのではないか、という批判をニュー・アート・ヒストリーから受けもした。しかし近年ではむしろ、イコノロジーの創始者であるヴァールブルクを、その「イコノロジー」概念も含めて再評価する試みなども行なわれるようになっている。
(石岡良治)
関連URL
●ヴァールブルク研究所 http://www.sas.ac.uk/Warburg/Default.htm
|