「国際様式」。より具体的には、1920年代のヨーロッパで流行した、機能主義的な立場から試みられた形態文法を特徴とする建築様式のこと。この言葉は、H=R・ヒッチコックとP・ジョンソンの二人による造語であり、1932年にニューヨーク近代美術館で開催された「モダン・アーキテクチャー」展以降広く喧伝されることとなった。二人によると、「インターナショナル・スタイル」の建築は、「静止した量塊」ではなく「平面を包み込むヴォリューム」の効果が強調されている点で、均衡を重んじる古典主義建築と大いに異なっているのだという。具体的な特徴としては、無彩色・無装飾の壁面か、内部空間の自由な間仕切りが挙げられる。二人によるこの定義は、もちろん「インターナショナル・スタイル」の中心を担う建築家がル・コルビュジエであるとの前提に立ったものであり、事実展覧会カタログもル・コルビュジエの主著『建築をめざして』に準拠していた。この展望は先駆的で、以後南北アメリカやアフリカでも盛んに「インターナショナル・スタイル」の建築が試みられ、この様式は典型的なモダニズム建築としての地位を獲得、後のポストモダニズム世代にとっての更新すべき権威となっていく。なお、この分野の詳しい研究としては、佐々木宏の『「インターナショナル・スタイル」の研究』(相模書房、1995)が挙げられる。
(暮沢剛巳)
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