神奈川県鎌倉市に所在する日本初の近代美術館。通称「鎌近(カマキン)」。現館長は酒井忠康(2002年5月現在)。1951年11月の開館は、博物館の施行や国立近代美術館開館以前にまで遡るものであり、約30年に渡ってその地位にあった初代館長・土方定一の定めた運営方針は、その後「鎌倉方式」として日本全国の公立近代美術館が範と仰ぐ前例となった。他から借り受けたコレクションを中心とする企画展中心の展示構成、新聞社事業局とのタイアップによる展覧会事業形態、学芸員による館外での積極的な執筆活動などがその例で、企画展重視の方針に基づく独特の雰囲気は現在にいたるまで継承されている。半面、開館当初から多くの貴重なコレクションを有していたにもかかわらず、1984年に北鎌倉の別館が開館するまでそれらがまとめて展示される機会はなく、またワークショップなどの教育活動も行なわれないなど、「鎌倉方式」には今日的な美術館運営とはずれている側面もある。なお、鶴岡八幡の境内に位置する本館施設は、ル・コルビュジエに師事したモダニズム建築家坂倉準三の代表作でもあるが、近年展示スペースの不足が深刻化しており、その不足を補うべく2003年に葉山に新館がオープンする予定である。
(暮沢剛巳)
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