第2次世界大戦直後のイギリスにおいて、社会主義リアリズムの色彩を帯びた作風で、当時もてはやされた画家たちの呼称。「キッチン・シンク」とは、「台所の流し」の意味である。
当時のヨーロッパは、時代そのものの暗い雰囲気を反映し、写実的な芸術、リアリズムへと傾倒していた時期でもあった。「キッチン・シンク」と呼ばれる画家の中でリーダー的な存在は、デヴィッド・ボンバーグであるが、彼らの表現するリアリズムは、その他のヨーロッパ諸国の同時代のリアリストに比べ、もっと描写的である一方、力強さ、リアリズムそのものへの忠誠といった点ではおぼつかないものであった。
(中島律子)
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