「生きている美術館」。といっても、美術館が実際に「生きている」わけはなく、この言葉は展覧会のテーマや問題提起、コレクションの充実度、そこで働く専門家(キュレーター)の調査や研究の水準、情報の蓄積・公開の実際、ワークショップ等の教育啓蒙活動など、美術館が社会に対して負っている役割の比喩であり、裏を返せば、「生きている」か否かが今日、美術館のダイナミズムを判定する重要な規範となるだろう。その設立理念や運営主体、あるいは規模、歴史、予算等によって各々の美術館が置かれている状況はさまざまだが、観者とのコミュニケーションが今後ますます重視されることは変わりなく、その意味では、現在大規模な改修・拡張工事に取り組んでいるポンピドゥー・センターやMoMAが示す指針は、21世紀の“生きている美術館”の試金石となるに違いない。国立美術館の「独立行政法人化構想」が実現された今日の日本でも、“生きている美術館”の実現に向けて有益な対話が求められる。
(暮沢剛巳)
関連URL
●MoMA http://www.moma.org/
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