現代イギリスのパフォーマンス・デュオ、ギルバート&ジョージのデビュー作品の題名にして、彼らの全作品の根幹を成す理念。美術学校彫刻科の同窓であった二人は、1969年教室で《リヴィング・スカルプチュア(生ける彫刻)》を発表した。当時隆盛であったヒッピー文化を皮肉って、彼らはコンサヴァな紳士服に身を固め、顔や手に金属粉を塗り付けて、数時間に渡って同じポーズをとり続けたのである。この「彫刻」で注目を浴びた二人は、翌年カセットテープから流れる流行歌に合わせて無表情に歌い続ける《シンギング・スカルプチュア(歌う彫刻)》を発表する。この自ら彫刻となるシリーズは70年代にかけて続いていく。彼らはこの「彫刻」によって芸術と実生活を結びつけるどころか、そのまま一致させてしまう。つまり、作家=制作行為=作品となるのである。70年代以降彼らは、徐々に自らを映し出した写真の制作に手法を変えていくが、そのなかでも自らを彫刻と捉えるスタンスは保持されている。ところで、どこかマネキン人形めいた彼らのスタイルは、同時代のポピュラー文化に積極的に取り入れられた。例えばドイツのテクノ・バンド、クラフトワークなど。
(苅谷洋介)
関連URL
●ギルバート&ジョージ http://www.gilbertandgeorge.gr/
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