京都大学哲学科出身の美学者で、戦後には国立国会図書館副館長も務めた中井正一が、1936年に刊行した同名の著書の中で提唱した立場。岩波文庫版の『中井正一評論集』(長田弘編、1995)でも冒頭に収録されていることから、その重要性が窺われる。ここでの「委員会」は
メディウムや媒介、「論理」はそれが行使される場における文化現象という、それぞれ一般的な定義とは異なる特有の意味で用いられており、その生硬な文体と複雑な論理は容易に理解できるものではないが、それにしても、言われる論理=古代文化=弁証、書かれる論理=中世文化=瞑想、印刷される論理=近代文化=経験/行動/機能と、時代ごとの「論理」を弁別した後、現代においてそれを統合すべき概念としての「委員会の論理」を提唱する論証手続きはきわめて緻密で思弁的であり、専門の美学美術史はもとより、ドイツ観念論、現象学、マルクス主義などにも精通した当時の第一級の知性がここに結晶している。あくまでも主観的な「趣味判断」を排している点で、その美学理論としての精度は
フォーマリズム批評を凌駕するとも言えよう。
(暮沢剛巳)
関連URL
●京大哲学科 http://www.bun.kyoto-u.ac.jp/index-j.html
●国立国会図書館 http://www.ndl.go.jp/
●岩波文庫 http://www.iwanami.co.jp/bunko.html
|