近代日本がつくりあげた社会のイメージ、またそれに荷担するデザインのイメージ、受容する側である近代日本の国民が共同幻想としてもつイメージの「いかがわしさ」を、日常のモノを媒介として分析していく本書は、著者の気鋭のデザイン評論家としての評価を確立させた。戦後の社会情勢とモノが生み出され、必然的に消費へと向かうシステムを繋ぐイメージの操作が、近代社会を構成するデザイナーや工芸家、企業家あるいは一般市民の個人の真摯な思いを誘導していくことを、都市計画、国家主導の施設を軸にそれに関わるデザイナーらの言説を読み解くことで抉りだそうとしている。「制度=イメージ」のなかから逃れるすべのないわれわれ自身の存在がモノに直接反映されていることを、モノについての言説をめぐって検証する著者の代表作である。詳細な人名インデックスや年表など、詳しく語られにくかった部分に対する実証も綿密である。
(紫牟田伸子)
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●柏木博 http://www.japandesign.ne.jp/KUWASAWAJYUKU/KOUZA/1/BUNKA/KASHIWAGI1/
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