モノクローム(単色)、すなわちある色彩の広がりによって支持体の表面を覆う作品は、ロドチェンコに始まり20世紀を通じてさまざまなグループに属する作家たちによって散逸的に制作されている。美術史の他の運動や傾向がある歴史的発展を遂げているのに対して、モノクロームの作品はある主題を提起するわけでもなく、流派を形成するわけでもなく、その展開は非連続的であると言える。単一の色彩で覆い尽くされた画面に賭けられているもの、それはルネサンス以来の「絵画」制作における線、素描、筆触、形態、奥行き、構図、主題、歴史などのあらゆる再現的表象の否定であり、「地と図」という絵画の二元的手法からの色彩の解放である。存在としての画面の回復は時として崇高という精神性の追求に結びついた。とりわけイヴ・クラインは1950年代後半よりIKB(インターナショナル・クライン・ブルー)と呼ばれる青色の顔料で《モノクローム》と題した作品を制作する。色彩を「物質的な感性」であると述べた彼は、物質的なものから非物質的な空無の次元を創造しようと試みた。また同時代、ピエロ・マンゾーニはモノクロームでも「色のない色」である白を中心にグラス・ファイバーやコットン・ボールを使用し《アクローム(非色)》と題した作品を制作する。そこで白以外の何ものでもない、非限定的な全なる存在としての画面を提示しようと試みた。
(平芳裕子)
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