1912年、パリのラ・ボエシー画廊における「セクシオン・ドール」(当時J・ヴィヨンのアトリエに集っていた若手作家たちは、グループの呼称として黄金分割を意味するこの語を名乗った)のグループ展を見て、詩人G・アポリネールはそこに出品されていたR・ドローネーの絵画を「オルフィスム」と形容した。この造語は、「オルフィーク」(「うっとりするような」の意)から派生したもので、アポリネールは当時抽象に転じたばかりのドローネーの絵画に、同時期の「分析的キュビスム」とは一線を画する音楽的な共感覚を見て取ったのである。以後ドローネーは、「セクシオン・ドール」の同僚であったF・クプカと新しい非再現絵画の運動を組織し、「オルフィスム」はこの抽象運動の呼称として定着するのだが、自然を題材とせず、徹底して幾何学的な形態のなかに豊かな色彩を盛り込もうとしたその表現に、「総合的キュビスム」への先駆を窺うことも可能であろう。
(暮沢剛巳)
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