ポンピドゥー・センターの開館当初から国立近代美術館が企画した一連の展覧会は、20世紀美術をさまざまな切り口から総括することを試みた点において斬新であった。なかでも、「パリ−ニューヨーク」(1977)、「パリ−ベルリン」(1978)、「パリ−モスクワ」(1979)と続き、「パリ−パリ」(1981)で終止符を打ったシリーズは、その規模と野心的な企画において現在もなお重要さを失っていない。一番最初に開催された「パリ−ニューヨーク」展は、副題に「1908−1968」とあるように、今世紀初頭から半世紀以上にわたる二つの都市の交流と競合を浮き彫りにしてみせた。デュシャン、レジェ、オザンファン、エリオンなどパリからニューヨークに活動の拠点を移した作家がアメリカ美術にもたらした影響や、抽象表現主義をはじめとする今世紀中葉以降のアメリカ美術がフランスに与えた衝撃および、アンフォルメルとの関係などが大きく扱われた点が当展覧会の特色と言える。カタログでは戦後の両都市の関係を論じたマルスラン・プレネやユベール・ダミッシュの文章、アクション・ペインティングという概念を提唱し、50年代アメリカではグリーンバーグと並ぶ代表的な批評家であったハロルド・ローゼンバーグが当時を回顧するインタヴューを掲載しており、詳細な年表などの資料集と併せて重要な文献となっている。
(飛嶋隆信)
|