カメラを用いずに写真作品を制作する技法。感光剤を塗布した印画紙の上に物体を置き、光を当てて明暗を再現するのが基本形で、そこに多くのヴァリエーションが加わって成り立っている。史上最古のフォトグラムは、ダゲレオタイプの創世記である1830年代にW・H・F・タルボットが制作した「光のドローイング」にまで遡ることができるが、芸術という観点からは、やはりC・シャドの「シャドグラフ」やM・レイの「レイヨグラフィ」「ソラリゼーション」といったダダイズムの実験や、L・モホリ=ナギの「フォト・プラスティーク」など、この技法がほぼ完成された1920年代の動向に注目すべきだろう。とりわけ「写真は光の造形である」というモホリ=ナギのヴィジョンは、彼が教育活動に携わっていた「バウハウス」から多くの作家や作品を輩出し、ちょうどこの時代を「フォトグラム」の黄金時代としたのだった。
(暮沢剛巳)
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