パブロ・ピカソ(1881−1973)のこの大規模な展覧会は、1939年11月15日から翌年3月3日まで、ニューヨーク近代美術館で開催された。作品数は344点にのぼり、以後3年間アメリカ国内を巡回した。ニューヨーク近代美術館で通算100回以上の展覧会を開催することになるアルフレッド・バーJrが企画したこの展覧会は、それまでのピカソの展覧会のなかでは、最も完璧に近かったとローランド・ペンローズが回顧している。そして1946年、バーJrはこの展覧会の図録に110点の図版を追加し、『ピカソ――彼の芸術の50年』を出版した。これは今なお、ピカソ研究の基本文献とされている。スペインにいた時代、青の時代、キュビスムの時代、新古典時代、マリー・テレーズ(そのモデルが彼女であるとはまだ特定されていなかったが)の一連の肖像画と彫刻、そして《ゲルニカ》(1937)にいたるまで、年代を追って、油彩、彫刻、素描などさまざまな媒体の作品が並べられている。なかでも、近代美術館が展覧会開催の数年前に購入した代表作《アヴィニョンの娘たち》(1906)と、制作されたばかりの政治的象徴作品である《ゲルニカ》とがどちらも出品されたのは、記念碑的な出来事だった。
(三上真理子)
関連URL
●P・ピカソ http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/p-picasso.html
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