形態の単純化を推し進めた「ミニマリズム」の実験は1960年代末に極限に達するが、70年代に差し掛かると一転して、あらためて絵画的・装飾的なアプローチを試みた新しいタイプの作品が登場するようになった。具体的には、R・セラやE・ヘッセの曲面的な立体作品のことであるが、71年に批評家R・P=ウィッテンはその新傾向を「ポスト・ミニマリズム」と命名し、それ以前の「ミニマリズム」と対置した。この新傾向を、「ミニマリズム」の“進歩”ととらえるか“退行”ととらえるかは議論の分かれるところだが、それは「ミニマリズム」の必然的帰結と思われる半面、多くの表現媒体のなかで、立体作品のなかにしかその可能性を追究できないところに「ポスト・ミニマリズム」の限界が窺われる。ただ、おそらく「ミニマリズムの時代」であった60年代から「コンセプチュアル・アートの時代」であった70年代へと、いち早く橋渡しの役割を担った事実は軽視されるべきではあるまい。
(暮沢剛巳)
関連URL
●R・セラ http://www.artseensoho.com/Art/GAGOSIAN/serra96/serra1.html
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