美術史上「プリミティヴィズム」という用語がいつ頃から用いられるようになったのかは判然としないが、その起源が18世紀フランスの啓蒙思想、とりわけJ=J・ルソー等の「ボン・ソヴァージュ」にあり、それ以降ロマン派的な思潮のなかで観念的に継承されていったことはいまや常識である。すなわち、文明によって汚されていない「善き野蛮人」は高潔な存在であり、そこから学ぶことは多大にあるのだ、と。具体的には、後年タヒチへと移り住んだP・ゴーギャンやアフリカ彫刻に触発されたP・ピカソのキュビスム絵画がすぐさま思い浮かぶが、ここでいう「プリミティヴィズム」が“文明人”と“野蛮人”という固定化した図式のもとに成立していることに注意しておこう。同様の図式は「ジャポニズム」や「オリエンタリズム」についても言えるのだが、この図式こそ最近、「西欧中心主義」やその“搾取”の最たるものとして、批判的考察の対象となっているからである。
(暮沢剛巳)
関連URL
●P・ピカソ http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/p-picasso.html
|