ロシア構成主義の芸術家E・リシツキーが、1919年から24年にかけて展開した幾何形態をモチーフとする作品群に自ら与えた名称。「プロウン」とは、「新しきものを確立するためのプロジェクト」を意味するロシア語の略称である。リシツキーは、K・マレーヴィチらのシュプレマティズムが示した幾何学的抽象を、現実の生活空間に応用することを目指した。そして特に二次元平面(絵画)と建築とのあいだの「中継駅」となるべくプロウンを構想した。具体的には、幾何形態による平面構成やレリーフ状の室内構成、建築物の設計図等の形をとる。十月革命以降のアヴァンギャルド全盛の時代にあって、リシツキーの構想は新しい工業デザインへの道を切り開くものであった。そして西側世界(主にドイツ)にも多くの影響を与えたのである。しかし、やがて来る反動時代に、リシツキーもまた多くの構成主義作家と同じく、活動の制限を余儀なくされた。
(苅谷洋介)
関連URL
●E・リシツキー http://www.getty.edu/research/tools/digital/lissitzky/
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