一般的には、ある記号がその指示対象としてその記号自体を有している事態を指す。芸術作品、特に文学においては、作品内にその作品自体に対する言及が含まれる場合、自己言及性があると言われる。『ドン・キホーテ』以来有名なこの手法は、20世紀に入ると諸芸術で主題的に展開されるようになり、文学では「メタフィクション」という言葉を生んだ。美術においては特にコンセプチュアルアートにおいて扱われることが多く、J・コスースの作品が特に有名である。メタレヴェルがオブジェクトレヴェルに絶えず繰り込まれていくこの形式は、デカルト的コギトの二重性とも共通点をもつため、主体や作者の問題にも関連付けられる。自己言及性をもつ作品はしばしば自家中毒的であると言われるが、こうした作品において重要なのは、主観性の形式とのアナロジーというよりは、むしろ指示という行為が生み出すさまざまなレヴェルの増殖可能性である。
(石岡良治)
関連URL
●J・コスース http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/j-kosuth.html
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