映画はその誕生から1世紀そこそこの新興芸術である。その最初期、遊園地のアトラクションまたは見世物小屋の呼び物であった。当時、映画は大衆娯楽でしかなく、芸術としては認められてはいなかった。1908年から映画についての執筆活動を始めたリッチョット・カニュードは、映画を既存の芸術ジャンルと対比しながら、その特性の定義を試み、1911年に『第7芸術宣言』を著した。映画の最大の特徴である動く映像や光学的な効果は、時間芸術(音楽、詩、舞踊)と空間芸術(建築、彫刻、絵)を総合するものである。よってカニュードは7番目の芸術、第7芸術という名前を映画に与えた。既成芸術との差異化を計ることが映画の発達する方向であるとしたカニュードにとって、同じく映画を芸術として知らしめ、その価値を高めようとしたフィルム・ダール社の作品は、撮影された演劇でしかなかった。だが両者とも、制度化された芸術と同じ扱いを受けようとする、新興芸術映画の闘争であることには変わらない。
(石田美紀)
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