1980年代のニューヨークを中心に展開された、ベンヤミン的な近代芸術の唯一性(アウラ)に背を向け、大衆芸術からの盗用(アプロプリエーション)を積極的に推し進めた美術運動。J・ボードリヤールの『シミュラークルとシミュレーション』(竹原あき子訳、法政大学出版局、1984)を理論的典拠としたその運動の軌跡は、高度資本主義の発達と並行して、「ポップ・アート」が示した方向性をさらに先鋭化するものであった。代表的作家としてはP・ハリー、S・レヴィーン、B・クルーガー、M・ビドロらが挙げられるが、いわゆる「ファイン・アート」の解体と情報資本主義批判という二面性をもっていた彼らの活動も、冷戦終結後の世界再編によって変質を余儀なくされている。なお日本でも、80年代末の一時期『美術手帖』誌がこの動向を積極的に紹介し、とりわけその本質を「カットアップ/サンプリング/リミックス」のキーワードによって説明した椹木野衣の言説は、日本において同様の試みを目指す若手作家にとって、格好の援護射撃となった。
(暮沢剛巳)
関連URL
●レヴィーン http://www.walkerart.org/resources/res_pc_levine.html
|