「自画・自刻・自摺」をスローガンに、明治40年代から太平洋戦争前までの約30年間にわたって、日本の版画界の主流となった運動、もしくはその中から生み出された版画作品のこと。創作版画は当初まとまったひとつのグループによる運動ではなかったが、中心的な役割を果たしたのが、山本鼎、石井柏亭、森田恒友ら東京美術学校出身の洋画家たちだった。彼らは明治40年に、各種の技法による版画作品を付録として綴じ込んだ美術・文芸同人誌『方寸』を創刊(明治44年まで通算35号)、創作版画普及に寄与した。また、明治末期から大正にかけては、ヨーロッパ美術のさまざまな動向が日本にも伝えられ始めていた時代で、なかでもドイツ表現主義による版画作品は、官展系のアカデミズムに抵抗しようとしていた当時の若い画家たちに大きな影響を与えた。創作版画の機運は大正時代になると、これらヨーロッパの新しい美術に刺激を受けた恩地幸四郎、長谷川潔、永瀬義郎、田中恭吉ら、さらに若い作家たちをも巻き込み、大正7年には、現在の日本版画協会の母体となる日本創作版画協会が誕生するにいたった。
(木戸英行)
関連URL
●山本鼎 http://www.spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/collection/item/P_8_593_J.html
●石井柏亭 http://www.spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/collection/item/P_9_594_J.html
●恩地幸四郎 http://www.art.comet.go.jp/tour/Nen-Yogo/sa10025.shtm
●長谷川潔 http://www.spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/collection/item/P_15_606_J.html
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