音響を主要な制作素材とした美術作品の一ジャンル。“視覚表象”の担い手である美術作家が制作を手がける点で通常の音楽作品とは区別される。果たして展覧会場で収録された音を事後的に再生して聴くことがサウンド・アートの「鑑賞」にあたるかどうかは、意見が分かれる問題だが、再生不可能な音響の唯一性に「サウンド・アート」の根拠を求める立場の方に、説得力があると思われる。美術と音楽との差異を越境しようとする試みは、1913年の未来派アーティスト、L・ルッソロによる「騒音芸術」に端を発するものだが、戦後「フルクサス」のアーティストらによる実験を経て、70年代に「イヴェント」、「コンセプチュアル・アート」の一種としての「サウンド・アート」が一応の確立をみた。R・アンダーソンのようなポップ・ミュージックによるパフォーマンスや、C・マークレイのようなターンテーブル・パフォーマンスなど、「サウンド・アート」の実験はハウス、パンク、テクノなど同時代の音楽の流行と切っても切れない関係にある。
(暮沢剛巳)
関連URL
●マークレイ http://www.music.ch/recrec/label/artist/marclay.html#index
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