今世紀前半、「未来派」や「ダダ」、「バウハウス」などによって前衛芸術のなかで重要な位置を与えられ、その後「パフォーマンス」と総称されるようになった身体芸術は、60年代以降は新たなテクノロジーを取り込み、作家と観客という関係を越境する性質をもつようになった。G・ブレクトが命名し、G・マチューナスの「騒音の構成」やJ・ボイスらのフルクサスによって展開された「イヴェント」はそうした身体芸術の系譜における代表的な動向のひとつであり、一般に台本を用いず、より偶然性に委ねる部分が多い点で、A・カプローらが推進した「ハプニング」とは区別されている。もっとも、カプローは「数回にわたって、数カ所で知覚されるイヴェントのアサンブラージュ」と「ハプニング」を定義しており、両者の差異は必ずしも明確ではない。いずれにせよ、美術用語としての「イヴェント」は、もはや「事件」や「出来事」といった日本語への翻訳が不可能な特異性を帯びた概念である。
(暮沢剛巳)
関連URL
●マチューナス http://www.slonet.org/~tsulaiti/fluxus.html
●ボイス http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/j-beuys.html
●カプロー http://www.hozro.it/editor.html
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