左右あるいは上下対称、釣り合い、均整のこと。美術およびデザインにおける基礎概念のひとつ。しかし20世紀前半の美術における幾何学的抽象の系譜をたどると、厳密なシンメトリーや反復のもつオーダーは機械的、装飾的、生命感の欠如といった理由により、芸術表現からは排除されてきたことがわかる。『Art
and Visual Perception』(1954[邦訳=『美術と視覚』波多野完治+関計夫訳、美術出版社、1963])の著者R・アルンハイムは、シンメトリーのもつ堅さは「いつも生き生きとしたズレによって緩和される」と言う。しかし、美術の根底にある自然主義に「抽象」の概念が対峙された時、シンメトリーが積極的に使用される契機が訪れる。戦後のミニマリズムの作家たちは「脱コンポジション」、「非関係性」の契機として、彼等の方法論に厳密なシンメトリーや反復の概念を導入する。例えばW・カンディンスキーの絵画を構成している諸要素はつねに巧みに配置され、相互に関係づけられ、微妙バランスをもつ。F・ステラやD・ジャッドはこのような「ヨーロッパ芸術の伝統」としてのコンポジション、関係性、バランスの観念を放棄することで、戦後アメリカ特有の美術のコンテクストを築こうとした。
(上崎千)
関連URL
●ステラ http://www.dnp.co.jp/gallery/ccga/ca/frank/frank.html
●ジャッド http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/d-judd.html
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