言語学や記号論で言う、文を構成する各単語の結合の仕方のこと(またはそれについて研究する学問領域のこと)。「統辞[語]法」と訳される。例えば「わたしは外の風景を見た」という文があるとして、「わたしは−外の−風景を−見た」という系列のつながり方のことをシンタクスと言う。こうしたシンタクスによって、個々の単語は文という一貫した意味をもった流れに束ねられ、またその流れのなかで、それぞれの単語の意味は発揮される。このもともと言葉の形式に関する概念であるシンタクスを、美術作品の形式をめぐる批評のなかに導入したものとして、マイケル・フリードによる一連のアンソニー・カロ論がある。フリードによれば、カロの作品は、まず「それの構成要素である、いくつものI字鋼、梁資材、円柱、鋼管、金属板、鉄格子などを相互に関係させつつ剥き出しのまま並置すること」にあり、このとき「個々の要素は、まさしくそれらの並置の効力によってお互いに重要性を与え合う」(「芸術と客体性」、川田都樹子・藤枝晃雄訳、批評空間別冊『モダニズムのハードコア』所収)。そしてこのことがカロの作品の「シンタクス」的性質とされるのだが、これはさらに、カロの作品が「自然にあるものとラディカル=徹底的に似ていない」(グリーンバーグ)ことに関わる。つまり、カロの彫刻と自然にあるものとでは、シンタクスが違うということになる。
(林卓行)
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