1988−91年にかけて、東京・青山に所在した現代美術の企画展専門の美術館。高級エステートを専門に手がけていた東高不動産が設立した美術館で、実際の展覧会企画は副館長の白石正美(後にSCAIを設立)を中心に発案され、豊富な資金力と恵まれた立地条件をバックに、「三宅一生――プリーツ・プリーズ展」、「ソル・ルウィット展」、「荒川修作展」、「レンゾ・ピアノ展」、「デヴィッド・リンチ展」など、さまざまな企画展を高級感溢れるイヴェントとして演出、世間の高い関心を集めた。バブル景気に沸いたこの時期の青山界隈は、ほかにもラフォーレ原宿や馬里邑美術館が現代美術の企画展を精力的に開催していたが、東高のそれは、規模・質ともに傑出していた。もっとも、景気の後退とともに、その活動は急激に失速、91年6月の「不思議な抽象展」を最後に展覧会活動は停止、表参道に面していたガラス張りの仮施設を、恒久施設に立て替えるというプランも雲散霧消し、美術館は人知れず閉館した。現在、かつて同館が所在した表参道の一角はオープンカフェとして賑わっているが、当時の面影はまったくない。
(暮沢剛巳)
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