「仮想美術館」。インターネットが普及した現在では、ホームページ上に作品が分類配置されたURLを現実の美術館に見立てることが十分な説得力をもちつつある。写真や映像のような「オリジナル」と「コピー」の区別が曖昧な表現様式は近代社会の産物であり、A・マルローの「想像の美術館」もそうした背景を踏まえたものだったが、近年のテクノロジーの進展と、「シミュレーション」や「アプロプリエーション」といった形態の流行は、この区別の溶解をさらに推し進め、また現代美術とコンピュータの結びつきを不可避のものとした。もっとも、「ヴァーチュアル・ミュージアム」とはネットの昨日を活用したアーカイヴァルな側面が注目されるべき概念であり、ネット上の環境を制作素材とした「ネットアート」とは区別して考えられるべきである。また、「現在のわれわれとともにある、現実化されるべき潜勢的なもの」というベルクソン=ドゥルーズ的な発想に基づくそのヴァーチュアル解釈は、P・アイゼンマンらの建築的実験「ヴァーチュアル・ハウス」と同根のものであると言えよう。
(暮沢剛巳)
関連URL
●アイゼンマン http://prelectur.stanford.edu/lecturers/eisenman/index.html
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