キュビスムの影響を受けイタリアの未来派とほぼ同時に発生しながら、それらとは一線を画する姿勢を打ち出そうと試みたイギリスの画家たちによる運動。この呼称は第一次大戦前のロンドンの芸術界をエズラ・パウンドが「渦巻き」のイメージを用いて描写したことに由来するという。W・ルーイス、E・・パウンド、W・ロバーツ、L・アトキンスン、E・ワーズワースなどが参加。彼らは1914年に『疾風(Blast)』誌を創刊、翌年には第2号を刊行し、ロンドンで団体展を催した。『疾風』誌第1号掲載の宣言に見られる、既存の秩序破壊と過剰な活力の礼賛は未来派の姿勢と類似している。しかし、文字どおり渦を描くように画面上に散りばめられた細長い幾何学的形態や、抽象化された動物や人間などを主な題材とする彼らの作品には、奇妙な静謐感を漂わせたものが多い。第一次世界大戦勃発にあたり動員された画家たちは、戦争のダイナミズムを自分たちの造形言語を用いて表現しようしたが、圧倒的な現実を前にそうした試みを徐々に放棄し、次第に穏当な具象表現へと回帰していった。
(飛嶋隆信)
関連URL
●『疾風(Blast)』誌 http://www.arbanet.com/arbat/mouve/blast/html/blast.htm
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